大腸ステント多施設共同前向き安全性観察研究
プロトコール
Ver.1
Colonic Stent prospective feasibility study
大腸用ステントを用いた悪性結腸直腸閉塞の治療
Treatment of malignant colo-rectal obstruction with
Colonic Stent
結腸直腸の悪性閉塞に対する術前の処置および姑息的治療
Palliation and "Bridge to Surgery" endoscopic treatment of malignant stricture in the colon and rectum
大腸ステント安全手技研究会
平成24年 6月 1日作成 Ver.1
目次
本観察研究の目的は、悪性結腸直腸閉塞の治療における大腸用ステントの臨床使用経験を蓄積し、その有効性と安全性を評価する事である。研究に参加した医師または参加した施設の通常の治療方法を変更することが目的ではない。患者は通常の治療方法によって治療を受けることになる。また、通常大腸ステントは術前腸管減圧(Bridge to surgery: BTS)と根治切除不能例に対する緩和治療とに分けられるので、それぞれに検討する事とする。
The objective of this registry is to compile clinical experience of use of the Colonic Stent for the treatment of malignant colo-rectal strictures. It is not the goal to change the usual treatment practice of the investigator or the center. Patients will be treated as per usual medical practices. The purpose of the Colonic Stent is divided into bridge to surgery and the palliative treatment for the inoperative patients. Analysis will divide into each purpose in this study.
本観察研究の意義:これまでは、本邦では大腸狭窄に対する金属ステントは本邦で薬事認可も保険収載もなかったため、限られた施設での臨床研究として、食道用ステントの流用や、海外から大腸用ステントを個人輸入して手技が施行されてきた。しかし2011年7月にようやく米国製の大腸用ステントの薬事認可が承認され、2012年からは保険収載の上で、全国的に使用可能となった。
今までの本邦の報告や欧米の報告では、技術的成功率が9割以上、臨床的成功率も約9割程度と良好な成績が報告されている。また留置手技に関する合併症も少なく、穿孔率が0-4%、合併症全体でも2-10%程度である。また、緩和治療目的の場合には長期の観察で1割程度の再閉塞、1割程度の逸脱、4%程度の穿孔率が報告されているが、患者のQOLの向上からみれば十分許容範囲内であると思われる。しかし一部では、緩和治療目的のRCTで4割の穿孔率で前向きの研究が中止になった報告(van Hooft: Lancet. 2006)や、欧州での大腸癌イレウスに対する大腸ステント留置と緊急手術のRCTでもステント群での穿孔率(13%)の高さから研究の中断がなされており(Hooft JE, Lancet Oncol 2011)、大腸ステントの有効性に疑問が持たれている。ただ最近の同じ欧米での多国籍多施設の前向き研究では、穿孔率が1.2%で非常に低く安全な手技として認知されている(Perez J, AJ Gastroenterol 2011)。今までの本邦での報告でも穿孔率は2%で合併症は決して多くない(Saida Y, Surg Endosc 2011)。本前向きの安全性確認の研究を通して全国的な大腸ステントの安全な手技の啓蒙を目指す事は本邦の大腸悪性狭窄患者のQOLの向上だけでなく、世界への安全性情報の発信として意義は大きい。
現時点で本邦で使用可能な大腸用ステントはボストン社製ウォールフレックスTM WallFlexTM Colonic Stentである。本製品は2つの構成部品、すなわち留置用金属ステントとデリバリーシステムから成る。ステントは、ナイチノールワイヤでできており、網目状のチューブ型に編み上げられている。この構造がフレキシブルな自己拡張型ステントを実現した。デリバリーシステムは、一部同軸チューブで構成されている。外筒チューブは、展開までステントを収納する役目を果たす。内筒チューブは、中央に0.035インチのガイドワイヤを通すルーメンがある。本品は内視鏡のワーキングチャンネル(最小チャンネル径:3.7 mm)を通して挿入することができる。
放射線不透過性マーカが3本あり、外筒マーカ、限界マーカおよび近位マーカと呼ばれている。外筒マーカはステントの先端近くに位置し、限界マーカバンドはステントの追従端近くに位置する。限界マーカバンドはステントの展開限界、すなわちそこを越えるとステントの再収納が不可能になる点を示している。近位マーカはステントがいっぱいまで拡張したときのその追従端のおおよその最終位置を示しているので、ステントの正確な留置を助けるのに役立つ。付録の使用手順書および完全版取扱説明書を参照すること。
本大腸用ステントはMRIとともに使用しても安全である。3テスラ以下のMRI環境にある患者に対して磁力による牽引力、トルクおよび熱による追加的なリスクはない。MRI画像で見たい部位がステントの留置位置と同一である場合を除いて、大腸用ステントが留置されていても、MR画像に見られるアーチファクトはMR画像の診断的には大きな障害にはならない。
大腸用ステントは室温で保管しなければならない。エチレンオキサイドガス処理によって滅菌された状態で供給される。本品は一人の患者さんにのみ使用されるよう設計されている(Single use only)。
なお今後新たに保険収載され使用可能な大腸用ステントが発売されれば、登録を検討することとする。
本観察研究は多施設共同で前向きな症例集積研究である。前向きな症例集積であり、安全性や有効性を評価するために一定の患者選択基準は設けるが、留置方法などについて規定するものではない。全国の病院から200症例のデータを蓄積することを目標とする。対象となる病院は、大腸ステント安全手技研究会の大腸ステント安全留置のためのミニガイドラインに従い本手技を安全に施行できると判断された、内視鏡治療の実績を高く評価されている施設である。
研究期間は、2012年5月15日から2013年12月31日までとする。
対象は大腸閉塞に対して大腸ステントを留置された症例で、200症例のデータ蓄積を目的とする。適応基準は製品の使用説明に従う。当該医師または当該施設の通常の治療方法を変更することが目的ではない。患者は通常の診療によって治療およびフォローアップを受けることになる。
データはオンラインWeb上で収集される。そして定期的に報告書が発行され提供される。
患者が100および200例登録された時点で、患者データの統計的分析を行う。患者が200例または登録期間終了時まで登録されてフォローアップが12か月に達した後、詳細な最終報告書が研究完了時に発行される。報告された情報を基に出版物が執筆される。
解析を考慮すべきデータ:本研究は、日本消化器内視鏡学会の附置研究会である「大腸ステント安全手技研究会」を母体として施行され、下記代表が研究責任者である。
連絡先:〒153-8515 東京都目黒区大橋2-17-6 東邦大学医療センター大橋病院 外科内本研究の問い合わせ窓口は、研究内容に関しては前記研究責任研究者に、Web登録に関しては下記研究登録事務局にお願いします。
研究登録事務局