新規大腸ステントの構造と展開動画
佐々木 隆1、吉田 俊太郎2、伊佐山 浩通3
1. がん研究会有明病院 肝胆膵内科
2. 東京大学医学部附属病院 光学医療診療部
3. 順天堂大学医学部附属病院順天堂医院 消化器内科
わが国における悪性大腸狭窄に対する大腸ステントとしては、2011年7月よりWallFlex TM Colonic Stentが、2013年7月よりNiti-S大腸用ステント(D type)が使用可能となり、日常臨床で内視鏡的大腸ステント留置術が広く行われるようになってきた。この2つのステントについては、その特性も大きく異なり、その違いについて本ホームページにおいても動画を交えながら解説してきた。
その後2017年頃より様々な新規大腸ステントが登場してきている。特に2019年には、従来のhook & crossのステントとは違うlaser-cut typeのステントや、covered typeのステントなども保険承認されてきている。そこで今回、これら新規大腸ステントを紹介するとともに、実際にその展開動画(机上実験)を見ていただくことで、臨床使用する際の参考になればと考え、本ページを作成することとした。なお、今回使用する静止画および動画は各社より提供していただいたものをそのまま使用している。
1.新規大腸ステント
2017年に登場した3つのステント(HANAROSTENT Naturfit Colon、Niti-S大腸用ステントMD type、JENTLLY Colonic Stent)に加えて、2019年に新たに3つのステント(NEXENT大腸用ステント、ゼオステント コロン、川澄ジャバラ大腸ステント)が保険収載された。これら6つのステントの静止画を下記に列挙する。Hook & Cross typeのステントも、それぞれでその編み方に細かい違いが認められる。一方で、ゼオステント コロンはlaser-cut typeのステントであり、川澄ジャバラ大腸ステントはfully covered typeのステントとなっており、新たな構造のステントとなっている。NEXENT大腸用ステントは透視マーカーの所だけ部分的にカバーが巻かれた格好になっている。それぞれのスペックについては、表1にまとめている。
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Naturfit | Niti-S MD | JENTLLY |
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NEXENT | ゼオステント | ジャバラステント |
表1.各種ステントのスペック(2019年11月現在)
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ステント名 | ステント径 | ステント長 | デリバリー径 | 構造 | カバー |
Naturfit | 20, 22 mm 18, 22 mm | 6, 9, 12 cm 6, 9, 12 cm | 10.2 Fr 9 Fr | Hook & Cross Hook & Cross | なし なし |
Niti-S MD | 18, 22 mm | 6, 8, 10, 12 cm | 9 Fr | Hook & Cross | なし |
JENTLLY | 22 mm 18 mm | 6, 8, 10, 12 cm 6, 8, 10, 12 cm | 10 Fr 9 Fr | Hook & Cross Hook & Cross | なし なし |
NEXENT | 18, 20, 22 mm | 6, 8, 10, 12 cm | 9 Fr | Hook & Cross | マーカー部分のみ |
ゼオステント | 18, 22 mm | 6, 8, 10, 12 cm | 8.1 Fr | Laser cut | なし |
川澄ジャバラ | 18, 22 mm | 6, 9, 12 cm | 10 Fr | Z-Spiral | あり |
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HANAROSTENT Naturfit Colon(ボストン・サイエンティフィック・ジャパン株式会社)
Niti-S大腸用ステントMD type(センチュリーメディカル株式会社)
JENTLLY Colonic Stent(日本ライフライン株式会社)
NEXENT大腸用ステント(クリエートメディック株式会社)
ゼオステント コロン(ゼオンメディカル株式会社)
川澄ジャバラ大腸ステント(川澄化学工業株式会社)
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2.各ステントの展開動画(机上実験)
1)長軸方向への伸び縮み
Naturfit
※画像をクリックすると動画が再生されます。
Niti-S MD
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JENTLLY
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NEXENT
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ゼオステント
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ジャバラステント
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2)長軸方向への伸び縮み(拡大)
Naturfit
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Niti-S MD
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JENTLLY
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NEXENT
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ゼオステント
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ジャバラステント
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3)デリバリーシステムからのステント展開
Naturfit
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Niti-S MD
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JENTLLY
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NEXENT
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ゼオステント
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ジャバラステント
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4)大腸狭窄モデル(直線)でのステント展開
Naturfit
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Niti-S MD
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JENTLLY
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NEXENT
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ゼオステント
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ジャバラステント
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5)大腸狭窄モデル(屈曲)でのステント展開
Naturfit
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Niti-S MD
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JENTLLY
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NEXENT
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ゼオステント
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ジャバラステント
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6)腸管への負荷
Naturfit
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Niti-S MD
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JENTLLY
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NEXENT
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ゼオステント
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ジャバラステント
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Naturfit
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Niti-S MD
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JENTLLY
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NEXENT
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ゼオステント
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ジャバラステント
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3.結語
今回、2017年以降に新たに登場してきた大腸ステントについて紹介した。今回新たに登場したHook & Cross typeのステントは、以前のWallFlex TM Colonic StentとNiti-S大腸用ステント(D type)の時ほどの差異は認められないため、実際の画像を見ていただくという形とした。各ステントで細かい違いがあり、それによるmechanical propertyの違いについては、今後明らかにしていく必要がある。また今回は机上での画像であり、実際の臨床での使い勝手の違いや臨床結果への影響についても今後明らかにしていくことが必要である。さらにlaser-cut typeのステントやcovered typeのステントなど新たな構造のステントがどのような効果を示すかも興味深いところである。いずれにしても、ステントの選択肢が増えてきたなかで、どのように使い分けをするか、またそれぞれの良い点、悪い点を明らかにすることで、大腸ステントがより良い方向に向かっていくことを期待する。
2019年11月1日作成